【略歴】
1993年ソウル生まれ。現在、茨城と千葉を主な制作場所に活動。東京藝術大学美術研究科先端芸術表現専攻修士課程在籍。
【ステートメント】
一人称視点の映像や内臓、幼児性などに関心をもっている。事物を混ぜていくように扱うなかでの美的経験とそのリアリティを源泉に映像や絵、ものをつくっている。
【作品解説】
2020年10月茨城県牛久沼のとある谷津地で300コ以上の虫かごを並べて風景をじゃむ(Jam)した。そのときのことは僕の額にとりつけたカメラによる一人称視点と、虫かごのなかにカメラを忍ばせた虫かごの内側からの視点による映像とによって膨大なデータサイズとして残されている。この映像をもとにデジタルによる時間の伸縮やカットアップなどの操作を介入させてつくったのが本作。作者と虫かごの記憶らしき時間イメージには奇妙な混交が生じ、無音にも関わらず映像からうけとられる世界は騒々しい。だからタイトルに「栄栄たり」といれた。映像を観る普通の僕によって、映像にうつっている虚像も、動かない物体も生きてしまっているようだ。
タイトルに困って手にとった陶淵明の詩集のはじめにあった「榮榮たり窓下の蘭」からタイトルは拝借した。友人の中国の留学生に意味を訊ねてみると、「窓の下では蘭がいっぱい花開き」という意味のようだ。カメラのレンズでは収まりきらない複数の虫かごの輝きは、収まりきってないからこそいっぱいの虫かごがあることを感じられるわけで、窓やカメラのレンズがのぞくあちらがわではなく、その内側にいるものとしての寂しい焦りと、世界への好奇によるアンビバレントな感情をタイトルに便乗させたつもりだ。
arakawakoken.net